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東急建設の新規事業「CMCOS」誕生秘話 -社会課題とビジネスの狭間で挑む現場の声-

公開日:2025/11/12

エナメディア編集部

エナメディア編集部

大企業の新規事業開発は、社会的意義は高いものの、短期的な収益化が難しいテーマに取り組むケースが少なくありません。

脱炭素や防災といった「ビジョンとしては崇高だが、すぐに売上につながらない事業」に挑む際、どのように進めればよいのか。

本記事では、東急建設株式会社の加藤様・重田様・鳴海様にお話しをお伺いし、建材CO2検索システム「CMCOS(https://cmcos-co2.com/)」を事例に起案者と制度側の両視点から、新規事業のリアルに迫ります。

まずは「CMCOS(コムコス)」について教えてください。

加藤様;

CMCOSは、建築業界における脱炭素化の要請に応えるための仕組みです。
建物を建設する際、低炭素材料を使用することで環境負荷を大幅に抑えることができますが、現状では「どのメーカーが、どの建材を、どの程度提供できるのか」という情報が分散しており、設計者がそれぞれヒアリングを行わなければならない状況にありました。
この非効率性を解消するため、メーカーや建材の情報を一元的に登録・共有し、設計者が検索して利用できるプラットフォームとして「CMCOS(コムコス)」を構築しました。
会員登録制とすることで、利用者が確実に最新の情報にアクセスできるようにし、低炭素建材の採用をスムーズに進められるようにしています。
将来的には、建築業界全体での二酸化炭素排出削減に貢献することを目指しています。

CMCOSを事業として始めた理由を教えてください。

加藤様;

もともと現場で設計支援を行っていた際に、お客様から強いニーズがあることを実感していました。
その時点では自作のExcelツールで対応していましたが、これをより多くの方に使っていただける形にしたいと考え、社内の新規事業コンテストにWeb版を出しました。
結果として社内で高い評価を得られたこと、加えて「確実に顧客の役に立つ」という手応えを持てたことから、本格的に事業化を進める決断をしました。

立ち上げの過程で直面した課題は何でしたか?

加藤様;

まず感じた課題は、ユーザーの反応が想定と一致しないことでした。
我々の頭の中では「役立つはず」と思っていても、顧客は必ずしもそうは感じていない。
想定と現実のギャップを埋めるのは容易ではありませんでした。
公開直後は多くの方に使っていただけましたが、そこから日常的に業務で活用してもらうにはシステムの価値が乏しいことがわかりました。
「利用者が求める機能や利便性を突き詰め、対価をいただけるだけの必然性をどう作り出すか」このハードルを越えることが、最大の挑戦でした。
また、社内でも「いつ収益化できるのか」という問いを常に突きつけられました。
事業性の説明とサービス検証を両立することの難しさを感じました。

起案者として、その課題に対してどのようにアプローチされていきましたか?

加藤様;

私はもともと技術支援の立場で顧客と接する機会が少なかったため、「課題に対する技術を提供する」という意識が強く、顧客視点は十分ではありませんでした。
業務的にシステムサービスの常識にも疎く、アフターフォローや細やかな気遣いを欠いた対応をしていたと思います。
加えて、これまでは建材を購入する側の立場でしたが、この事業ではサービスを提供する側に回ります。
売り手と買い手の関係が逆転したことで、顧客対応の在り方に混乱し、整理しきれずに苦労しました。

鳴海様;

本業である建設事業と、WEBサービスを提供して顧客から利用料をいただくビジネスモデルは全く異なります。
その違いを理解し、発想を切り替えることは容易ではありません。
私は以前、Webサービスを展開する会社で営業をした経験があるため、「なぜ顧客がお金を払うのか」を考える立場にいました。
その経験を活かし、事業モデルの視点を補うように努めました。

加藤様;

これまでは技術者として建材メーカーに接していたため、メーカー側ではなく我々が「お客様」のような存在でした。
しかし、新規事業ではサービスを提供する立場になることもあります。
この逆転を受け入れるのに時間がかかりました。さらに社内に目を向けても、新規事業への理解はまだ十分とは言えず、応援されている一方で「本当にできるのか」という疑念を感じる場面もありました。
その視線を跳ね返すような気持ちで取り組んできたのが正直なところです。

エナジャイズの支援はどのように作用しましたか?

加藤様;

すごいな、と思うことが多かったです。
人脈を作れるのは非常に大きいと感じましたし、アドバイスをいただいたり、発信してもらうことで担当の幅が広がっていくのはありがたかったです。
こちらの質問の傾向とは全然違う視点から提案をいただけたのも印象的でした。
建設業界のことを全然知らないはずなのに、自ら調べて提案を持ってきてくれる。
こちらの想定を超えて主体的にどんどん動いてくださる姿には驚かされました。
CMCOSの営業資料作成のサポートを依頼した際も、提供できる情報が不十分だったにも関わらず伴走していただき進められたんです。
まだ固まっていない状態だったのに、あそこまで形にしていただいたのは本当にすごいなと思いました。
さらに、いろいろなデータベースから企業をリストアップして、「こういう会社が今興味を持っていそうだ」と候補を整理し、ホームページも確認して、-上から順番にアプローチをかける- そんな進め方をしてもらえました。
将来的に興味を示すかもしれない企業を見つけていただいたことは、私一人では絶対にできなかったことです。

鳴海様;

営業支援の実績やWebサービス運営の知見を持っているエナジャイズに入っていただいたことで、そこでいただいた意見が社内での説得材料にもなりました。
「今こういう会社に動いてもらっている」というだけでも社内の理解が進みましたし、大きな後押しになったと感じています。

最後に、CMCOSの展望に関して教えてください。

加藤様;

今後については、業務で活用してもらえるサービスとして機能やコンテンツをブラッシュアップしていけるよう検証を続けます。
ただ、現在のヒアリングでは「法的にCO2削減が義務化されないと、活用は難しい」という声を多くいただいています。2028年度頃までに国が主体となってLCA制度の整備が行われる動きもありますので、そうした制度や時代の変化も追い風になるのではと期待しています。
サービスを高めていくだけでなく、CMCOS自体が「どういうものなのか」「どのように使えるのか」を業界にしっかり伝えていくことが重要だと考えています。そのために現在はCO2関連の情報発信を進めており、CMCOSの位置づけや利用の具体像を明確に示していく予定です。


※「CMCOS\コムコス」は東急建設の登録商標(登録第 6788780 号)です。

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株式会社エナジャイズ代表取締役岡崎 史

プロフィール 大学卒業後、大手飲料グループを経て、40事業を超える新規事業の立ち上げを経験。その経験を活かし、2022年、PMFと顧客開拓を同時に実現する『PMFプログラム』を開発。
徹底的に顧客視点に立つ独自の手法で、年間2,000社の新規商談を生み出すなど新規事業推進のスペシャリスト。
大企業を中心に伴走支援、研修、講演等実績多数。

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